勤務医が疲弊し、開業などで病院を去ったことが医療崩壊の一因だ


河北新報 コルネット 社説 医療クラーク/中核病院の新たな戦力に




総合病院や救急施設など中核的な医療機関で働く勤務医に重くのしかかっているのが、煩雑な事務作業だ。病院の医療事故対策や情報開示が進む中、文書の量は年々、増え続ける。
 基本的なデータ作成などを医師の指示で代行するのが「医療クラーク(事務員)」。米国の病院では、事務作業を補佐するクラークが数多く配置され、医師の負担軽減に役立っている。
 厚生労働省は2008年度の診療報酬改定で、勤務医離れの歯止め策としてクラークを雇う病院への支援制度を新設、日本でも取り組みが始まった。医療現場からは歓迎する声が聞かれる一方で、「どこまで任せたらいいか、判断に迷う」など戸惑いも見られる。
 救急患者などに対応する勤務医が疲弊し、開業などで病院を去ったことが医療崩壊の一因だ。クラークを早く定着させ、チーム医療の形を整えてほしい。
 医師が作成する文書は診断記録のほか、主治医意見書、入院証明書、民間医療保険の証明書、転院先への引き継ぎ書など山ほどある。患者に治療方針を説明して同意を得るインフォームドコンセントに時間をかけるようになり、書類が1週間分たまることもあるという。
 ただ、事務作業のうち、パソコンへの診療記録の入力、データ整理、カルテ管理など形式的な手続きも多い。こうした業務から医師を解放するのがクラーク導入の一つの狙いだ。
 厚労省は、クラークを配置した病院に対し、診療報酬を上乗せしている。10年度の改定で追加措置が取られ、「50床にクラーク1人」の割合の病院では、入院患者の入院料が2550円加算される(入院初日のみ)。
 独自の支援策を設けている自治体もある。宮城県はクラークを雇った病院の人件費、研修費相当分を負担。本年度までに東北大、石巻赤十字など県内の13病院で計37人が採用された。
 クラークに国家資格はなく、研修を受けて専門知識を身に付ける。同県医療整備課によると、「医師の精神的な負担が軽減された」「医師が本来業務に専念できて入院ベッドの稼働率が向上した」など病院の評判はまずまずという。
 半面、課題も浮き彫りになってきた。総合病院には内科、小児科など多くの診療科があり、求められる専門知識や診察の流れが異なる。クラークの数が限られる中で、各分野に精通するまでには年数を要する。
 医師との間で作業範囲をどう振り分けるかの線引きが難しく、医師が完結させてしまう例もあるという。宮城県の支援策を活用して新たに5人を採用した東北労災病院の担当者は「今は緒に付いた段階で、定着までには時間がかかる。専門知識などの学習を続け、技術向上を目指したい」と話す。
 各病院は経験の蓄積を図りながら、業務区分を明確にした指針を定めるなど、定着に向けた院内整備を進めてもらいたい。
via kahoku.co.jp

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